繰越損金と評価損益
前回の投稿では主に個人と法人での資産運用をした場合のメリットとディメリットを解説しました。その際に記載した繰越損金や評価損が法人においては節税効果を生むと説明しました。今回はさらに掘り下げて解説していきたいと思います。
まずはおさらいとして簡単に個人と法人の比較をしてみましょう。
個人の場合….
損失においては、繰越は3年まで。
原則 確定損金のみ適用。株式取引と先物・FXを合算して繰越及び翌年度利益との相殺は不可。
例
株式取引: A社 1000株 (約定レート 100万円)保有
FX取引: ドル/円 1ポジション保有、ユーロ/円 1ポジション保有
2019年度12月最終営業日までに A社株損切り売却により30万円の確定損失、さらにFX取引においてドル/円ポジションを損切りし70万円の確定損失が発生。
これらを2019年度確定申告により繰越損金の申請が可能。
この場合、ユーロ/円ポジションは保有しているため評価損益に関わらず申告不可。
翌年度、2020年新たにB社株を購入し12月最終営業日までに売却利益が10万円、さらに配当金で1万円が入金された場合…
これを前年の損金 30万円と相殺できるため無税。さらに相殺残金の19万円を翌年度の2021年に繰越可能。
2021年度に19万円以上の利益が発生しない限り無税となります。ただし2022年度に19年度の損金を相殺残金の有無に関係なく引き続き繰越すことは不可。20年度に損金が発生していた場合のみ、その損金分を適用することは可能。
FXにおいても同様にドル/円ポジションの損金を3年間繰越すことが可能。
2019年度の損金70万円と 2020年度にユーロ/円を決済し70万円以下の利益であれば無税、それ以上の場合は相殺した残金が課税対象となります。
法人の場合….
繰越損金は9年
確定損金と時価評価損ともに算入可能。
上記例と同様に、
株式取引: A社 1000株 (約定レート 100万円)保有
FX取引: ドル/円 1ポジション保有、ユーロ/円 1ポジション保有とする。
仮に12月を決算月としていた場合、12月最終営業日までに A社株損切り売却により30万円の確定損失、さらにFX取引においてドル/円ポジションを損切りし70万円の確定損失が発生。
これらを決算により株式取引とFX取引分を合算した 100万円を繰越損金として申請が可能。
法人の場合、保有ユーロ/円ポジションの評価損益が算入されます。評価損の場合はさらにマイナス分を追加して繰越、評価益の場合は確定損失分と相殺されます。そのため事業年度末の時点で保有ポジションで評価益がある場合はなるべくクローズしてキャッシュフローとした方が無難です。
評価損を利用した節税例
少し極端に解説しますと法人でFX取引をする際にポジションを同通貨ペアでロング・ショート両建てした場合はこの節税方法が効果的に適用できます。
ドル/円通貨ペアで両建てした場合を例にしてみましょう。
1ドル=100円 10Lotずつロング・ショート両建て。
決算時 1ドル=110円に上昇 ↑
ロングポジション: +1000 Pips クローズ
ショートポジション: – 1000 Pips 保有
この場合、確定利益10円分に対してショート保有ポジションの評価損が相殺され無税となります。本来 25%~35%の税金が免除されます。
逆の例で1ドル=90円に下落 ↓
この場合ですと、ショートポジションの利益にロングポジションの評価損が相殺となります。同様に無税です。
しかし個人での運用の場合はどちらの例でも評価損は確定申告に適用できないため自動的に約20%利益に課税されてしまいます。
前回投稿した法人のその他のメリットも含め、株式やFXといった資産運用は法人が断然有利と言えるかと思います。今後も私自身の運用例とともにこういった解説をしていきたいと思います。